信長 (新潮文庫)

信長 (新潮文庫)

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新潮社
価格: ¥780

信長 (新潮文庫)のレビュー

斬新な切り口で展開される信長評伝
本書は日本史上唯一無二の傑物・織田信長を著者独自の視点で捉えた作品です。主に『信長公記』と『武功夜話』の引用から信長の事績を辿り、分析に関しては東西の英雄伝をも引き合いに出しながら興奮覚めやらぬ筆致で書き進められています。

此までも「信長は孤高の天才である」という認識が衆目の一致する所であったことは想像に堅くありません。しかし既存の歴史観念や日本人的な感性の枠内で醸造され、矮小化した価値観の延長上で信長の思考・精神・戦略眼を推察してきた側面も否めない様に思います。当然ながら秋山氏の分析・論述もその枠内から完全に脱しているとは言えませんが、信長と云う未曽有の天才を世界の英雄達と比較することで新たな一面を読者に提供してくれています。

秋山氏の大胆な人物・歴史考察は個人的には腑に落ちる箇所も多かったのですが、本人の信長贔屓も高じてか冷静さ・客観性を欠いている表現も散見されます。国外は兎も角も国内の人物(大名・武将)を比較対象とした場合「信長には出来て信玄には出来なかった」等と断言する論調が目立ち、対象側への斟酌もなければ背景に言及されることもない為不当に貶められているような内容も見受けられました。また非常に引用部分が長く、現代語訳や簡潔な説明も付随していない為に読み進めるのに多少難儀する箇所もありました。

以上のように幅広い読者層にはお勧めしかねますが、信長の実像に迫る貴重な作品でもあると思いますので興味を持たれた方は是非ご一読を。
影響力ありました
英雄史観が嫌いな人には噴飯モノに違いない一冊。信長の内なるロマンを捉えようとした評伝です。漠たる印象ではありますが、この本以降の信長小説は大なり小なり影響を受けたような感じがします。池宮彰一郎氏の『本能寺』なんてモロに、という感じでしたね。ここからの生き写しのような文章もありましたし…。信長以外の武将を過小評価しているという印象も特にありませんでしたよ?上杉謙信の人間像なんて美しい。
一時信長本にハマったものですが、いろいろ読み漁れば漁るほど、「夢」のように遠のく感じでした。信長を追う現代日本人には、「かつて存在した『征服されざる日本』」の夢があるようにも思います。秋山氏はその「夢」を鮮やかに捉えてらっしゃる。美しく書かれたロマンチックな本で、私は大好きです。
ある意味で危険な評論
素晴らしい本であることは確かだろうが、その書きぶりの何と気障で鼻持ちならぬことだろうか。しかも殆どが、文献を引用してそれに少々批評めいたことを書いたいるだけのこと。だた、周囲から理解されない人間がこれを読んで己も信長的な能力を持っているからそうなのだとでも考えたら恐ろしいことだ。
秋山駿と信長
愛してやまない男、秋山駿。

彼は石ころの精神を獲得した

日本で稀有の評論家。

その男が書く「信長」

ならば結構ではないか。
信長という精神との格闘の記録です。
信長という巨大な精神との格闘記です。信長について書かれた本は数多くありますが、信長という精神に、肉薄しようとした作品はこの本と、辻邦生さんの「安土往還記」ぐらいでしょう。一見、信長を美化しているようにも見えますが、真に独創的な精神に触れた時の感動が、そのまま表現されている、というべきでしょう。いくら言葉を重ねても足りず、逆に、月並みな引用を重ねてしまう。著者の気持ちが良く伝わります。